「かぜ」をひいたとき:知っておきたいこと
「かぜ」を治す薬はありますか?
「かぜ」の原因の大半を占めるウイルスには特効薬はありません。(インフルエンザのみ、抗ウイルス薬があります。)抗生物質は細菌には効きますが、ウイルスには無効です。いわゆる「かぜ薬」とは、咳をしずめたり、痰を出しやすくしたり、熱を下げたり、痛みをやわらげたりする薬をひとまとめにして呼んでいるだけです。残念ながら、これらの薬を早く飲んだから、「かぜ」が早く治るものではありませんし、使い方を誤るとかえって症状を長びかせるかもしれません。
「かぜ」はどうやって治るのでしょうか?
「かぜ」のウイルスはヒトの体に侵入すると鼻やのどでどんどん増えていきます。体は鼻水や咳でウイルスを追い出そうとし、わざと体温を上げて(発熱)、ウイルスの増殖を抑えようとします。その間に体の免疫反応が高まり、ウイルスを排除し感染が終結します。すなわち咳や鼻水、熱はかぜウイルスに対する体の防御反応です。「かぜ」は「治す」ものではなく、子どもが気持ち良く安心できる環境を整え、症状に応じたケアをしてあげて「治るのを待つ」ことが必要です。また、いざという時に免疫力を発揮できるよう、日頃から十分な睡眠、休養、規則正しい生活を心がけることがかぜ対策になります。
家庭ですこし注意しておいてほしいこと
通常「かぜ」は自然に治っていくものですが、それでは昔から、なぜ「かぜは万病のもと」といわれるのでしょうか。ひとつには、「かぜ」をきっかけに、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの合併症を起こしてしまうことがあるからです。また、最初は「かぜ」かな、と考えていたら、はしかや百日咳、結核などのやっかいな感染症であったり、川崎病、白血病や悪性腫瘍だったりすることもまれにあるのです。最初にみられた症状だけで常に正しい診断を下すことはどんな医師にも不可能なことです。ですから、家での子どもの状態(食欲、活気、機嫌など)や症状の変化をしっかり観察し、気になることがあれば受診して医師とともに経過をみていくことが大切です。
(板金康子)