父親の役割
父親になった時、健康なよい子に育って欲しいと願います。しかし、家庭の中で、父親の存在あるいは役割が、どうも曖昧なものになってきています。子どもに問題が起こったとき、どうにも頼りにならないと責められ、世の中の父親よ「しっかりしろ」といわれます。子どもが育つ間、喜び、希望、不安、怒り、諦めのない交ぜ状態が長年続きます。大多数の父親は諦観(あきらめ)という安定状態を得て子育てを卒業するものと思われます。
昔と違い男性が大人になり父親になることが難しい時代です。女性は初潮、妊娠、出産、子育てと明らかな身体的変化と育児により大人になり母親になります。男性は何時大人になったのかも定かでありません。子どもを身近に見て、私が父親であると認識するだけです。難しいことですが父親になるには父親になる努力が必要です。「子育てはおまえにまかす」と奥さんに絶対に言わないで下さい。何年か後の父親の苦悩が目に見えます。
子どもは日々刻々と発達し成長しています。1歳半まで母と子は一体となっている時で、父親はおむつを替えたり母親の育児の援助をする時期です。1歳半から4~5歳までは行動範囲が広がり、家庭の一員となる時で、この頃本格的な父親の出番が始まります。仕事が忙しいと言い訳せず、家族のために時間を作る必要があります。4~5歳以降子どもは家庭から社会へデビューする時で、子どもの運動会で父親は普段の運動不足を省みず一生懸命走ります。12歳頃から難問の多い思春期に入ります。母親は子どもを慈しみ育てる面とともに、子どものすべてを支配し呑み込んでしまう一面があるといわれます。父親はあたたかく見守りながらも冷徹な目で観察し、子どもの「悪」に対して、自分の判断と責任において、「ノー」と言わねばなりません。お子さんはあなたのお子さんです。問題があっても最後の最後まで信じてあげて下さい。二十歳になり一緒に酒を酌み交わす日を楽しみにして下さい。
元より子育てに教科書はありません。父親の役割に思いを巡らし振り返っていただきたいと思います。
(浦岡善英)