いまどきのしつけ
こどものしつけって、難しいですね。ほめて育てようなどと簡単にいいますが、なかなかそうもいかない。でも、しつけの度が過ぎると、こどもの虐待になることもありそうですよね。怖いことに、最近の研究では、いろんな種類の虐待を受けたこどもは、その虐待の種類に応じた変化が、脳に起きてくることがわかってきました。
体罰を受け続けた子どもは、脳の第10野と呼ばれる、思考や犯罪の抑止力に関わる部分の容積が縮小するとか、怒鳴られたり、罵りや侮辱の言葉を言われ続けた子どもは、脳の聴覚に関連した部分の容積に異常が出る等々です。
これはあくまでも極端な例の話です。でも、しつけの仕方をどこかで十分習ってから、親になるわけでもなく、気が付いたら親になっていることも多いですよね。
子どもが何か問題行動を起こした時に、つい感情的に怒鳴ったり、バカ呼ばわりしたりしていませんか? 体罰や怒鳴りつけるなどはしつけの上では逆効果しか、生み出しません。でもいまどきは、子育てで困っても、あまり相談する人もいない状況もありますよね。近年、発達にでこぼこのある子どもたちをいかに育てるかという方法を導くプログラムがいくつか考案されてきました。アメリカで開発されたペアレント・トレーニングやオーストラリアで開発された前向き子育てプログラム(英語の頭文字をとって、トリプルPと呼ばれます)などです。この方法は、発達に特に問題を抱えていないこどもにとっても有意義です。いずれのやり方も、要点はやっぱり「ほめてのばす」にあります。叱るときは、大人の側が感情的にならずに、具体的に本当はどう行動すればよかったかを、年齢に応じた具体的な言葉で示す。たとえば、「食事のときは、ちゃんとしなさい!」ではなく、「食べるときは、こぼすといけないから、座って食べようね」とか、「赤ちゃんみたいに泣くんじゃないよ、バカだね!」ではなく、「なんで泣くの、気持ちはわかるけど、足でドンドン音をたてるのはやめようね」などです。また、悪いことをしたときに叱るよりは、当たり前のことでもいいことをしたときにほめる機会をふやしましょう。「今日は、歩き回らずに、ご飯が食べられてえらいね、いいことできた表にシールを貼ろうか」など、また、目標を決めて、いいことできた表が、シールで埋まったら、達成感を強めるためにためにご褒美を与える。ご褒美は、必ずしも物を与えることではなく、公園で一緒に遊ぶ、絵本を1冊読む、パパと動物園に行く、など子どもの好きなことでいいのです。子どもが暴れる→親がイライラして思わず怒鳴ったり、たたいたりしてしまう→子どもが更に泣き叫ぶ→親はたたいたことの若干の反省と、泣くのを鎮めようと抱きしめてしまう。これでは、こどもは暴れたほうが、抱きしめてもらえるというパターンに入り込みやすくなります。子どもが暴れた時には、危険がなければしばらく、そのままにしておく。親も頭に来たら、まず深呼吸をして、数を数えて自分の気持ちを落ち着かせてから、子どもに対処するなどです。書き出せば、たくさんになるので、中途半端ですが、紙面の関係で、ここまでにいたします。
- 「ペアレント・トレーニング(親子が笑顔に戻る10の方法)」
野口啓示 著 明石出版 - 「トリプルP(~前向き子育ての17の技術~)」
加藤則子、柳川敏彦 編集 診断と治療社 - 「トリプルP 前向き子育てブックレット」(トリプルPジャパンHP参照)
(西野昌光)