在宅小児医療

 

cc066 以前は新生児や小児病棟に長期入院となっていた子どもたち、とりわけ人工呼吸器や胃瘻(いろう)をつけた重症児の在宅移行が進んでいます。

 小児の在宅医療の特徴は、小児は発達していく存在であるという点です。高齢者の在宅が人生の残りの貴重な時間を住みなれた自宅や地域で過ごすというのに比べ、小児の在宅は在宅に移行した時から、その児の本当の人生が始まると言っていいでしょう。さまざまな体験をし、活動範囲を広げ、成長・発達の可能性に挑戦していくというアクティブなものであると思います。

 さて、高齢者の在宅医療ではケアマネージャーという地域でのいろいろな問題を解決していく調整役(コーディネイター)がいますが、小児の在宅ではいません。多くの場合、母親がその役割を子どもへの愛情の強さ(深さ)と涙ぐましい頑張りで担っていますが、ともすれば過重負担にもなりがちです。ケアマネージャーに相当する人は必須です。

 また、母親や家族を支える地域の医療・福祉・教育のネットワーク構築も不可欠です。家族、地域の人たち、医療・福祉・教育のプロ集団等は、役割分担と連携をしてみんなでその児の成長を応援する一つのチームであり、地域のかかりつけ医もそのチームの一員、歯車の一つとして期待されます。子どもを中心に見据えてみんなで奮闘することで、地域の育児力が強化されるでしょう。

 加えて、母親や家族の休息のために在宅児を一定期間施設や病院に預かる機能(レスパイト)も必要ですが、とりわけ人工呼吸器など重症児がレスパイトできる病院や施設は非常に少ないのが現状です。

 小児の在宅医療が増えてきているとは言え、まだまだ整備されておらず、さまざまな課題を残しています。行政、地域、医療機関などが役割分担と連携をして、解決していくことが求められています。家族が、病院での長期入院や施設入所ではなく、在宅を選んで良かったと思えるような地域や世の中にしたいですね。

(春本常雄)

 

 家族とのかかわり   投稿日:2013/05/01