子どもとメディア
テレビ、ビデオの長時間視聴廃止は子育て支援と共に
メディア社会という言葉の響きを歓迎するか否かに関わらず、いまやテレビやビデオが日常生活に不可欠であることを否定する人は少ないのではないでしょうか。テレビ、ラジオに加え、コンピューターやゲーム機器も子どもを取り巻く環境の中に普及しています。しかしそれらが子どもの成長に及ぼす長期影響については未だ結論は出されてはいません。
メディアと子どもに関する議論は大きく三つに分かれます。一つはテレビやコンピューターの画像による刺激が子どもの脳の機能に及ぼす影響です。この点については検討の途上です。二つめは、現実ではない世界が子どもの対人間・対社会におけるやりとりの発達に及ぼす影響です。テレビを長時間視聴している子どもに言語や社会性の遅れが認められるという報告があいついでなされ、アメリカ小児科学会や日本小児科学会、日本小児保健協会などが長時間視聴を避けるよう提言しました。この点については、親や周囲の人とのやりとりを、身をもって学ばなかった子どもは、その後の情緒の安定や社会性の発達に支障をきたすという主張に同意できます。テレビから一方的な働きかけでは相互交流が育たないのも当然でしょう。ただし「テレビやビデオをやめましょう」の呼びかけだけですべてが解決するとも思えません。早期教育の一環としてテレビを見せているお母さんなら、よくないとわかればやめることはできるでしょう。しかし「子どもに接するのが苦手でテレビに任せている」お母さんには、子どもとの過ごし方や接し方などを教える育児支援なくしては効果は期待薄です。三つめの問題は暴力や性的な場面といったプログラムの内容が子どもの情緒面に及ぼす影響であり、この点についてはもっと危機感を持ってよいでしょう。何よりも子どもにみせる番組を作るのも、テレビやゲームを買い与えるのも我々大人です。我々大人の一人一人が次世代の子どもたちの成長に責任があることを理解し、真剣に考え取り組まねばなりません。
(石崎優子)