メディアの子どもたちへの影響とその対応
昭和32年、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって『一億総白痴化』運動が展開されていると言われてから、50年以上たちましたが、我々はテレビのみならず、ゲームやネットなどさまざまなメディアに曝されない日がないといっても過言ではありません。若年齢の子どもたちも例外ではなく、情報端末としての携帯やネットに曝され、それに伴う犯罪や事件、ケータイやネット依存や生活リズムの乱れ、心身の発達への悪影響などが取りざたされています。日本小児科医会では、「2歳までのテレビ・ビデオの視聴はひかえよう」「授乳中や食事中のテレビ・ビデオの視聴はやめよう」などの5つの提言をしています。
しかし、具体的に子どもたちとメディアについてどのように対応すればよいのでしょうか。テレビ・ビデオ視聴については、親がメディアに触れる時間と内容を吟味する能力(メディアリテラシー)を十分に身につけた上で、親子で一緒に会話をしながら視聴するのであれば、幼少児でも多少の視聴はかまわないと筆者は考えています。ただ、その条件として単に番組をだまって一緒に見る「共視聴」ではなく、見ている内容について親子で会話をすることが大切です。また、親自身も子どもたちにメディアに触れさせない時間帯やメディアに全く触れない一日をつくる意識をもち、実践することも重要です。単に長時間、子どもたちに映像を眺めさせているだけでは脳の「前頭連合野」の活動低下をもたらし、思考力や判断力、語彙(ごい)の発達には繋がりません。
また、小・中学生なるとネットや携帯など個々に利用することが多くなりますが、メディアの利用は2時間まで、夜9時以降はメディアとの接触を避ける、テレビやパソコンはリビングに置き、一人視聴は控えるなどの習慣づけも大切です。しかし一方で、思春期の引きこもりや家庭内暴力の中には、自室で携帯やネットに依存している児も存在し、単に強制的な携帯やパソコンの取り上げだけでは解決にならないこともあります。このような場合は逆にメールでのやりとりなどをうまく活用し、子どもの心を開かせることが問題解決の糸口になる場合もあり、専門医や専門機関と連携の上で対応を図ることも大切になる場合もあります。
(竹中義人)