赤ちゃんとゲーム
2011年アイフォーンに触ったり振ると画面が変化する、赤ちゃん向けゲームとも言えるベビーアプリが登場しました。授乳中に、テレビやDVDを見ているお母さんが77%、ケータイメールを打っているお母さんが40%を超えるという報告があります。
赤ちゃんはお母さんに抱きしめられ、笑顔を見ながらおっぱいを味わい、その香りを嗅ぎ、優しい声に守られていることを知ります。この触れ合いで五感は発達し、愛着を形成し、生きる自信をつけます。人の目をみつめ、表情を読み取り、言葉の調子を感じてコミュニケーション力を培います。乳児期の脳神経回路が発達する大切な時期に赤ちゃんからのアイコンタクトを拒否し、更には電子メディアに子育てをさせたらいったいどうなるのでしょうか…。
乳幼児は、周りの環境、物や人の応答から実際の物理を学びます。例えば立体視です。実際の風景や人物を見る時には目の筋肉を収縮させて近く遠くに焦点を合わせ、左右の見え方の差で遠近感を学びます。ゲームでは立体に見えるよう平面上の映像を工夫する訳ですから目は近くに焦点を合わせたままです。ゲームには操作に対し応答がありますが、それは現実世界の物理とは異なります。大人が経験から学んだ感覚に似せて反応を作ってあるため、認知や五感のゆがみが出る心配があります。
1~2歳頃というのは、歩き出し真似を始める可愛い時です。でも自我の発達で、親にとってはダダコネに手を焼く年齢でもあります。そんな時、電子メディアは実に便利なベビーシッターになり得ます。教育的なソフトならと、つい利用してしまう現実があります。
メディアは魅力的なツールで、それを使いこなすことは今の社会生活では必要不可欠です。しかし未発達な子どもへの影響は、成熟した脳への影響とは根本的に異なります。人間として本来あるべき成長を抑制してしまう可能性があるのです。最低限、2歳までのテレビ・ビデオは控えたいと思います。授乳中、食事中はメディアを消し会話を楽しみましょう。保護者と子どもで上手に利用するルールを作って下さい。接触時間を決め、子ども部屋にテレビ、ビデオ、パソコンを置かないようにしましょう。そしてゲームの開始年齢は「現実」と「空想」がはっきりと区別されてくる8歳~10歳以降が望ましいと思われます。
(原 統子)