病児保育
「入園してからよく熱を出し仕事中に呼び出されます」、「明日熱が下がれば、保育所に行けますか?」、小児科の診察室では、このような会話が日常的に交わされています。保育所調査によると、4月から7月にかけて実に83%の園児が体調不良を示したという数字もあります。保育園などの集団生活では、バイ菌やウイルスがうつる確率が高いのは確かです。子どもは日常疾患にかかりながら成長します。予防接種は全て受けるようにし、症状が出た時にはあせらずに毎回きちっと治していくことです。症状はあるのに元気そうというときには、少人数保育で安心な病児保育を利用してはいかがでしょう。厚生労働省の「病児・病後児保育事業」では、医療機関や保育所に併設された病児保育室には安静室や隔離室があり、子ども2人に対して看護師と保育士のスタッフが1人という2対1の手厚い保育看護をするように定められています。1日の利用料は2千円+おやつ代などで、まず医師が診察して入院する必要がない病気であることを確認します。生後3か月から小学3年生頃まで預かるところが多いです。事前に登録をしておき、生育歴や予防接種歴、既往症やアレルギーなど特に注意が必要な点を記して提出します。利用時には電話で予約しておき、入室時に診察が行われます。専門の保育士や看護師にいろいろ相談もできます。市町村の事業なので、自治体によって対応が異なる部分があります。残念ながら、運営の困難さなどから、事業数は平成22年度末でも全国で539市町村、943施設しかありません。それでも、ニーズは年々高まり、国ではさらに数を増やすよう計画しています。「病気の時くらい親が家でみるべきだ、病気の子どもを預けっぱなしで仕事をするのは如何なものか」という意見もあります。しかし、実際の病児保育室では、子ども達は少人数で快適な療養環境で過ごして楽しそうです。仕事を終えて、急いでお迎えに来られるお母さんとの再会もほほえましい限りです。実際に1回当たりの利用日数はほとんどが1日か2日で、預けっぱなしなどではありません。どうしても仕事を休めない時もあるでしょう。あるいは、他に相談する人がいなくて家でみるのが心配な時もあるでしょう。親子がイライラし不安なままで、家で過ごすのだけは避けたいです。子育てで最も困るのは子どもが病気の時です。安心で安全なセーフティネットとして、もっと病児保育施設が増えれば良いですね。
(木野 稔)