新生児診療相互援助システム(NMCS)の働き

 

 大阪には、低出生体重児や生後間もない赤ちゃんが呼吸障害など病気になったとき、新生児専門施設でお互いに助け合うNMCS(新生児診療相互援助システム)という日本に誇る優れたシステムがあります。

 NMCSは、最初1977年に7つの病院が淀川キリスト教病院に集まって、「大阪で生まれた病気の赤ちゃんをすべて新生児専門施設へ入院させよう」という主旨のもと、全くのボランティア活動として始まりました。

 初代会長は竹内徹先生(元府立母子総合医療センター院長)で、副会長の鶴原常雄先生(元小児保健センター所長)が情報センターとして24時間電話対応して入院先を探すという形の出発でした。その3年後大阪府医師会に新生児医療推進委員会が設置され、行政からの経済的支援も得られる形になりました。

 現在大阪府医師会と行政(大阪府、大阪市)の支援の下、6基幹施設(総合周産期母子センターに相当)、24協力施設(地域周産期母子センターに相当)からなっています。基幹施設では、「新生児搬送」といって助産院、産院、他の病院で病気の赤ちゃんが生まれた場合、医師が赤ちゃんを新生児用救急車で迎えに行く24時間体制をとっています。また自施設に入院できない場合、「三角搬送」といって赤ちゃんを他のNMCS入院施設に搬送する体制もとっています。最近は、出生前にリスクの高いお母さんをNICU(新生児集中治療室)のある周産期医療施設に搬送する「母体搬送」が主体となっています。1987年にはOGCS(産婦人科診療相互援助システム)が、さらに1997年にはNSCS(新生児外科診療相互援助システム)が組織化され、NMCSと協力して活動しています。

 このように大阪府では、日本でも最も恵まれた母児の健康と医療を支える周産期医療システムが関係者の努力で構築されています。一方24時間で働く過酷な労働状況の下小児科医や産婦人科医の不足のためNMCS施設でも、小児科や産婦人科の閉鎖が現実に起こっています。そのため大阪府では、労働条件の改善と医師のキャリアパスを支援する府立急性期・総合医療センター内に大阪府医療人キャリアセンターを設置し、若手医師のキャリア形成をサポートする「周産期医療コース」を創設しました(2011年)。2012年9月にはNMCS主催・キャリアセンター共催で医学生・若手医師のための新生児学基礎講座「とことん新生児セミナー2012」を開催しました。日本に誇る良いシステムをさらに発展するために、皆様の周産期医療に対するご理解とご協力をお願いします。

(船戸正久)

 

 妊娠・出産   投稿日:2006/09/01