吐く子

 

cc108 男の赤ちゃんが下痢をしたり、ミルクを吐いたりすると、「男の子は腸が弱いからね」とか「男の赤ちゃんは1か月になると吐きやすい」などと、おじいさんやおばあさんから聞いていませんか。別に男の子に限りませんが、せっかく飲んだ母乳やミルクを吐いてしまうと非常に心配なものです。吐くといっても、十分に乳を飲んだあとで、げっぷの時や、横にした時などにだらりと口から出てくるのは、乳が溢れ出てきているだけなので、文字どおりに溢乳(いつにゅう)と呼び、生理的なものです。生後6か月頃までは、食道から胃の入り口にかけてのしまり具合がゆるく、胃の圧が上がると口まで逆流してしまうからです。吐いても赤ちゃんの機嫌が良いときは心配いりません。生後まもなくから吐きはじめ、十分にげっぷをさせても月齢とともに回数が多くなり、体重が増えないときは、胃食道逆流症という病的なものが考えられます。逆流性食道炎や誤嚥性肺炎などをおこして、赤ちゃんの様子もしんどくなりますので、その時は医師の診察を受けて下さい。一方、生後3週頃から吐きはじめ、乳を噴水のように飛ばして吐くときには、肥厚性幽門狭窄症が考えられます。胃から十二指腸への出口を幽門といいますが、生後1か月前後に幽門周囲の筋肉が厚くなって幽門が狭くなる病気です。吐いたあとは空腹から乳を欲しがりますが、またしばらくすると気持ち悪くなって吐いてしまいます。便秘がちになり、体重が増えなくなります。脱水を起こすことがあるので、早めに診察を受けましよう。重い場合は手術になりますが、最近は薬で治ることも多く、生後2か月以降になると症状は自然に軽くなります。男の赤ちゃんの方が3倍以上この病気になりやすく、「1か月の男の子は吐きやすい」というのはこの病気のことを裏付けているのでしょう。その他にも、乳を吐く病気はたくさんあります。吐く以外に、熱や下痢、血便がある、機嫌が悪い、顔色が悪いなどの症状があれば、ためらわずに診察を受けましょう。

(木野 稔)

 

 新生児期から生後半年くらいまで   投稿日:2006/09/01