指しゃぶり
あいちゃんは、1歳半、診察室に入ってきて、おりこうにして診察がおわり、お母さんと医師が話し始めると、右手に人形を抱きながら左手の指を吸い始めます。遊んでいる時は指を吸わないけれど、暇になると吸ってしまいます。お母さんは働いていて、いつも2歳上のおねえちゃんとお母さんの取り合いです。保育園では、あいちゃんは指をあまり吸わないと保育士さんが言っていました。
指しゃぶりは発達の一つの場面
赤ちゃんは、生まれてすぐから、口の端にものが触るとチュッチュと吸いつきます。「チュッチュ」という音に新生児室を見回すと、生まれたての赤ちゃんが指を吸っていることがあります。おなかが空いているらしいです。生後6か月ごろになるとおもちゃに手を延ばして取ってながめたり、口に持っていってしゃぶるようになり、その後しばらくは、なんでも口に持っていく時期がつづきます。おもちゃの代わりに指や手をながめたり、吸ったりしますが、2歳すぎから指しゃぶりは減っていきます。平成12年度「幼児健康度調査」によると、指しゃぶりは2歳未満児の約19%、2歳児以上の約14%にみられます。
3歳以降の指しゃぶりは「開咬」の原因になります。
指しゃぶりをしている子どもが3歳になったら、「おねえちゃんになったから、もう指を吸うのをやめようね」と働きかけましょう。指しゃぶりを続けると、上あごと上の前歯を前に押し出し、下あごと下の前歯を後ろに押しやるので、奥歯の噛み合わせは正しいけれど、上下の前歯の間にすき間ができる「開咬」になります。ひどいときには、発音が不明瞭になったり、食べ物を飲み込みにくくなることがあり、歯とあごの矯正が必要になります。指しゃぶりを減らすには、指しゃぶりをしかるのではなく、じゅうぶんに遊んだり、相手になってやること、そして指しゃぶりが減ってきたら、子どもをほめてやりましょう。
(山上佳代子)