朝の腹痛
朝の一番あわただしい時に、「お母さん、おなかが痛くて幼稚園(学校)に行くのがいや」とお子さんに言われた経験のある方も意外に多くあるのではないかと思います。そこで、朝の腹痛について少しお話しておきましょう。
小児の腹痛は、日常診療のなかで、発熱、咳についで頻度の高い訴えです。その原因も多岐にわたり、程度のごく軽いものから、強度のものまで種々あります。まず腹痛で診療が必要か否かを簡単に説明しますと、大部分は機能的異常によるもので、自律神経過敏状態であり、内臓の病気ではないものです。手掛かりとしては、臍の周囲にのみに痛みを訴えているものや、逆に痛みの場所が漠然としていたり、広い範囲のもの、その他、腹痛以外に頭痛とか四肢痛などを同時に訴えるもの、また、排便すると軽快するものは、機能性のものである可能性が一層高くなります。これに対して、例えば、空腹時に痛みを感じたり、夜半や特に明け方に痛みがあって、目を覚ますようなことがあれば、消化性潰瘍、ことに十二指腸潰瘍に疑いをもつ必要があります。また、仙痛様の痛みがあり、その時意識が多少障害されて、痛みが治まるとしばらく眠る、というものは、腹部てんかんを考慮しなければなりません。
子どもの数が少ない現在の社会では、親が過保護、過干渉になる傾向が強く、子どもたちは精神的ストレス過剰状態になり、腹痛を訴えることも多くなると思われます。もし機能的な異常であれば、朝早目に起こして、体操や、縄飛び、ランニングなど、子どもの体力に合った運動をさせてから朝食を摂り、幼稚園や学校に行かせるのもよいでしょう。重要なことは、精神的負担になっているものがあれば取り除き、心配であれば、かかりつけ医に相談して、その子どもに合った対応をとられるとよいでしょう。
(蔭山尚正)