学校検尿
「腎臓が悪い」というと、おしっこが出にくいとか、むくみが出るとかという事が頭に浮かびますが、そういった症状が出てくるのは一部の「急性腎炎」や、とことん悪くなってから(末期腎不全)です。ほとんどはなんの症状もなく子ども達は元気です。学校で毎年尿の検査をするのは、「手遅れ」にならないように早めに見つけて、早めに治療をするためです。学校検尿では「血尿・蛋白尿・糖尿」があるかどうかを調べます。たとえなにか陽性でも、すぐに病気ということではありません。学校から医療機関に行ってもう一度検査をする場合には、病院で出した尿に加えて「早朝第一尿」を採るようにいわれる事があります。これは、前の晩に排尿したあと、朝起きて一番最初の尿のことで、この尿でみると問題がないことがよくあります。採り方のコツは、初めに出でくる尿には尿道の精子や(思春期の男の子)、外陰部の雑菌(女児)が混じって来ることがあるので、出始めの尿は捨てて途中の尿をコップに採ることです。また女児では月経前後の数日間は採尿を避けます。
「糖尿」に関しては、食後の尿で初期の糖尿病が発見されることがあります。特に肥満傾向のあるお子さんやご家族に糖尿病があれば、「食後の検尿」も必要です。
「蛋白尿」には、「体位性蛋白尿」や「良性蛋白尿」といわれる心配のないものと、全身疾患に伴ったりまた腎臓病からくる「病的蛋白尿」があるので、専門家の判断が必要です。
「血尿」には腎臓から出てくる「腎炎性血尿」とその他から出てくる「非腎炎性血尿」があります。その血尿を顕微鏡で詳しく見たり、腎臓のエコー検査でわかることがあります。ご家族の中に同じような検尿異常の人がいるかどうかも大切な情報です。
「血尿」と「蛋白尿」の両方が陽性の場合には「腎炎」の可能性が高く、腎生検などの精密検査が必要な場合があります。
少しくらい「血尿」や「蛋白尿」があっても運動制限や食事制限は必要ありません。「小児科専門医」による正しい診断と指導を受けてください。
(東野博彦)