成長痛
「成長痛」というのは、病名と言うより、幼児期の繰り返す下肢の痛みで、特に骨や関節の治療すべき病気を認めない場合の症状の呼び方と思ってください。もっとも有名なネルソンの小児科の教科書を引用しますと、主として4歳から8歳の子どもの、10~20%に見られる、特に問題のない夜間の痛みとして知られています。こどもの筋肉や骨の痛みの原因としては、成長痛が最も多くその痛みは、痛くなったり、よくなったりを繰り返し、左右両方の脛やふくらはぎの痛みで、膝や足首の関節の痛みではありません。多くの子どもは、午後遅くから夜間に痛みや、つった感じを訴えます。痛みはしばしば朝起き抜けにも起きますが、マッサージや痛み止めの内服ですぐによくなり、翌日も出ることはありません。
見た目に、筋肉や皮膚や関節が赤くなったり、腫れたりすることもなく、びっこを引くこともありません。時間がたてば、徐々に症状は無くなっていきます。
従来はこのように、成長痛は特に後遺症も残さず、時間がたてば解決する病気と考えられてきました。しかし、成長痛を経験する人の一部は、次第に腹痛や頭痛も増強し、父母にも同じような症状があり、刺激に対して、痛いと感じる程度が敏感になっている(痛み閾値の低下)ことがわかってきて、研究が進められています。
一方、年長児で下肢に痛みを伴う場合には、膝より下の、脛骨と呼ばれる骨の上端や下端の筋肉や腱の付着部に病気を生じることがあり、これは成長痛と区別して、整形外科で診察を受ける必要があります。また、骨の発育期の小学生高学年から中学生にかけて、スポーツにより骨や筋肉、腱が過労性の障害を起こすこともあるので、年長児の持続する下肢痛に関しては、低年齢児の痛みとは分けて考える必要があり、これも整形外科に相談してください。
(西野昌光)