海外の予防接種事情
WHO(世界保健機関)では、最低限接種すべきであるワクチンとして麻疹、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、BCGをあげており、これらは世界的にほぼ共通に接種が行われています。その上に各国の事情によってその他のワクチンが組み合わされ、実際の接種が行われています。例えば、日本では小児に対して先に挙げた6つに加えて風疹、日本脳炎、ヒブ感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症のワクチンが定期接種として規定されています。ただ、これらの予防接種を行う時期や方法はそれぞれの国によって違います。
海外で従来から行われていて、日本国内でも行われるようになってきているものは、混合ワクチンの使用、同時接種、筋肉内注射の三つのキーワードで表せるでしょう。接種すべきワクチンの種類が増えたことなどもあって、海外ではジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ四種混合だけでなく、さらにヒブやB型肝炎も含めた五種混合、六種混合などもあります。また麻疹風疹混合(MR)ワクチンという2種類だけでなく、おたふくかぜを含めたMMRワクチンが主流ですし、さらにみずぼうそうまで加えたワクチンも用意されています。このような混合ワクチンを使用して、さらに単独のものしかないワクチンを組み合わせて同時接種することで速やかな免疫の獲得が図られています。また、四種混合などの不活化ワクチンは日本では原則上腕に皮下注射ですが、海外ではそれよりも免疫獲得上有利とされる筋肉内注射で、接種部位も大腿部が選択されています。
その他、それぞれの国内での状況により必要とされるワクチンの接種回数も異なります。アメリカ、フランスなどの欧米諸国、お隣の中国や韓国のように、小学校などに入学するには「予防接種を済ませているという証明書」が必要な国もあります。このように各国で少しずつ考え方や接種方法は違いますが、共通してその背景にあるのは「ワクチン接種により子どもを感染症から守ろう」という思いです。
(川崎康寛)