夏かぜ

 

cc188 夏かぜを引き起こす主なウイルスはエンテロウイルスとアデノウイルスです。エンテロウイルスは約70種類の型があり、コクサッキーやエコーが含まれます。その年に流行している型が異なるので、同じような病態として何度も発病することがあり、それぞれの型に対する免疫力を獲得しながら成人になっていく訳です。この夏かぜの症状は、発熱や咽頭痛のほかに、腹痛、下痢をきたし易く、また風しん様の発しんをきたすこともあります。型によっては無菌性髄膜炎を起こすことがあり、ひと夏の大流行を招き病院のベッドが埋まることもありました。この場合、高熱が続き顔色が良くなく、頭痛が強く嘔吐が頻回で、親御さんも「これはただのかぜではないな」と思われるでしょう。しかし入院して安静と全身状態改善に努めればすぐに良くなるものです。このエンテロウイルスの仲間が起こす病態で手足口病とヘルパンギーナが学校伝染病として有名です。前者は手の平、足の裏、膝や肘あるいはお尻にまめのような水疱ができ口内の痛みがあります。発熱は軽度で数日で治ります。後者は突然高い熱をだし、咽頭粘膜に周囲が発赤した水疱や潰瘍を形成します。のどをかなり痛がりますので、水分までも摂り難い状況となりよだれがきつくなります。同様の嚥下痛を起こすものに溶連菌の感染がありますので医師の診断が必要でしょう。

 アデノウイルスは約50種類の血清型が知られていますが、その1/3が病気を引き起こすと言われています。この仲間の多くは急性呼吸器感染症を起こしますが、熱が結構続き、咳がひどく百日咳と間違えるほどのことがあります。なかにはクループや細気管支炎を起こして呼吸困難を呈し入院を余儀なくされることもあります。3と7型は結膜炎を伴う咽頭結膜熱を起こし、プールの水を介して集団発生する場合は“プール熱”と呼びます。11と21型が原因となり、血液で真っ赤な尿となる出血性膀胱炎もあります。

(三木正之)

 

 感染症   投稿日:2006/09/01