りんご病

 

 「ほっぺ」がりんごのように赤くなる(紅斑)ので、りんご病と名付けられました。

 正式の病名は伝染性紅斑です。日本では1912年に最初の報告があり、その後、地域的な流行がほぼ8~10年毎に起こっていましたが、1981年を中心に全国的な流行が起こりました。同年から厚生省全国感染症サーベイランス事業が始まり、本症の流行が、4~6年毎に起こることが分かりました。1983年、本症の病因がヒトパルボウイルスB19の感染によることが確認されました。飛沫感染が通常の感染ルートで、手による媒介も考えられ、また、稀に血液(製剤)を介しての感染もあるようです。密室での人同士の感染は30%位と推定されています。ウイルスが排泄される前駆症状までの期間は約1週間、発疹が出るまでの潜伏期は10~20日で、感染後、約1週間~10日間感染可能、紅斑の出た段階では殆ど感染力はありません。4歳~5歳をピークとして、幼児、学童が好発年齢です。季節的には、特定出来ません。この病原体ウイルスは赤芽球前駆細胞で増殖します。鼻根部を中心に両頬に蝶が羽根を広げた形の紅斑が特徴です。1~2日遅れて主に腕、脚にレース様の紅斑が出現します。体幹部にもレース様の紅斑が出る場合もあります。これらの紅斑は数日~1週間で消えますが、なかには2~3週間も出没することもあり、また日光にあたると赤みが強くなる傾向があります。発疹の出る約1週前に血中にウイルスを認め、軽い咳、鼻汁などのかぜ症状、関節痛、頭痛などの出現に気付くこともあります。健康小児の場合、合併症はなく、軽症に経過します。本ウイルスが赤芽球に感染することが重篤な合併症の主体をなすが、免疫反応によると考えられる合併症が多い。合併症としては、関節痛・関節炎(小児では約10%、大人に多い)、紫斑病(特発性血小板減少性紫斑病、血管性紫斑病)、脳炎、心筋炎、腎炎などの報告があります。遺伝性溶血性貧血患者では、強度の貧血や骨髄の無形性発作を起こすことがあります。特に、妊婦が感染すると、流産や胎児水腫を起こすことがありますので要注意です。(妊娠11~19週の妊婦が感染すると、10~20%の胎児感染が生じ、7週以内に胎児水腫が高率に発生します)。この病気は、特別の治療は不要ですが、合併症の発生や妊婦との接触に注意が必要です。発疹が出現した時期には抗体が上昇し、感染力が下がっているので、本人が元気であれば、登校(園)は差し支えありません。

(岡本健治)

 

 感染症   投稿日:2006/09/01