ヘルペス口内炎

 

 食物やお茶を飲もうとして口まではこんでもひとくち口にいれると急に不機嫌になり、噛んだり、飲み込んだりしなくなる、よだれが口からあふれ出るくらい多くなる、このような症状に気付いたらヘルペス口内炎(初感染ヘルペス)を疑います。数日前の発熱を問診で確かめることにより診断を確定します。

 原因はヘルペスウイルスによる人から人への感染です。ウイルスは唾液中に多く排泄され、食器やタオルに付着して周囲に感染します。舌や口腔、目の粘膜から侵入したウイルスは侵入局所で増殖し始めると同時に血流に入ってリンパ節、肝臓、脾臓などでも増殖します。

 発熱が2~3日続いて下がり始めても、口腔内や舌には新しい潰瘍が増えつづけます。舌に多数分布している神経が病巣におかされると嚥下時に強い痛みがあり舌を動かせなくなります。その結果、唾液が口からあふれでるようになります。このようになっても熱さえなければ比較的元気そうで、欲しがるままに好物や水分を与えると口まで運ぶのですがひとくち口に入れると痛みのため咀しゃくできなくなり異常に気付かれます。

 口内炎の拡大と発熱が続く場合には脱水状態に陥り点滴治療が必要になることもあります。ヘルペスウイルスの特効薬(アシクロビル)は副作用も少なく1日4回服用(重症なら点滴)することで症状は改善します。 治療により病気は一週間以内に完治しますが、ウイルスはその人の一生涯を通じて体内に棲み続け、成人になっても一時的に体力(免疫力)が低下したときには、あたかもそれまで潜伏していたウイルスが再び目覚めたように活発に増殖(再活性化)し体外に排出されます。このとき口唇ヘルペス(再発型)などの症状を顕わすこともありますが、無症状でウイルスを排出する場合も多く感染源が不明のまま免疫のない小児に初感染をおこします。母親の口唇にヘルペス潰瘍があれば、頬ずりや口うつしに食物をあたえてはいけません。

 ウイルスは、熱(煮沸)、塩素系の洗剤、アルコールに弱いので唾液の付着したものの扱いに注意すれば大きな流行になることはありません。しかし、角膜ヘルペスの合併や、致死的な新生児ヘルペスについても特に注意が必要です。また、口内炎はヘルペスウイルス以外に原因があることもあり早期にかかりつけ医を受診することが最も大切です。

(馬場宏一)

 

 感染症, 消化器   投稿日:2006/09/01