子どもの肝炎

 

cc197 子どもで肝炎(肝機能障害、検査ではトランスアミナーゼの上昇)を起こす病気の種類は数多くあります。まず、大人と同じようにウイルス肝炎があります。肝炎ウイルスは現在まで、A~E型までの5種類が知られていますが、D型は日本の子どもでは感染の報告がありませんので、A型、B型、C型、E型が問題となります。このうちA型とE型は急性肝炎のみを起こし、しかも大人と比べて子どもでは症状が軽く、短期間で治りますので、問題の少ない肝炎と言えます。B型、C型は主に血液を介して感染するもので、激しい肝炎や長期間続く肝炎を起こしやすく子どもでも問題が多い病気です。幸いにしてB型肝炎には有効なワクチンと治療薬(インターフェロンと内服の特効薬)があり、C型肝炎には内服薬とインターフェロンの注射がよく効きますので、近い将来B型、C型肝炎のこどもがゼロになる日が来るものと期待しています。また赤ちゃんにだけ起こる新生児肝炎という病気があり、その一部はアミノ酸の先天異常のことがあり、専門の医師に診てもらったほうがよいと思います。同じく代謝異常ですが、肝臓に金属の銅が貯まってしまう病気があり、発見が遅れると肝硬変で死に至ります。ウイルソン病といって、検査値の異常パターンはウイルス肝炎とよく似ており、原因不明のウイルス肝炎として放置され、必要な治療が遅れてしまうケースもあります。A~E型の肝炎や子どもで肝障害を起こしやすいサイトメガロウイルス、EBウイルスなどの原因が否定されたら、ウイルソン病かどうかの詳しい検査(おもに血液と尿を調べる)を行う必要があります。その他、赤ちゃんや幼い子どもがよく罹る突発性発疹(HHV6というヘルペスウイルスの肝炎)やロタウイルス胃腸炎など肝臓以外のウイルス感染による肝障害が多くみられます。とくにヘルペスウイルス(サイトメガロウイルス、EBウイルス、HHV6など)による肝障害は幼い子どもが発症することが多く、症状がなく、肝障害も軽度で一過性なことが多いのですが、中には肝炎が長引いたり肝臓の働きが低下して死亡するケースもありますので注意が必要です。

(田尻 仁)

 

 感染症, 消化器   投稿日:2006/09/01