マイコプラズマ感染症
マイコプラズマは主に呼吸器感染をおこし、感染者の3~5%が肺炎に進展します。15歳以下の小児に多く発症し、飛沫や接触感染により広がります。潜伏期間が長く、家庭内、保育施設、幼稚園や学校など濃厚な接触がある集団で流行します。
初発症状は発熱、倦怠感、頭痛で、数日遅れて乾いた咳が出始め、次第に強まり長く続くのが特徴です。また胃腸症状や、発疹が見られたり、髄膜炎や脳炎を起こし重症化したりする例もあります。発熱や咳が強い割に胸の音は悪くありません。小児科医は年長小児で発熱や強い咳嗽がある場合は、マイコプラズマ肺炎を疑い検査や治療を行います。マイコプラズマ肺炎では白血球数や炎症反応の増加はあまり見られません。診断には菌を分離するか、血液中の抗体検査や遺伝子検査が用いられますが、分離や遺伝子検査は何処でも出来るものではなく、抗体検査が一般的に用いられます。抗体はゆっくりと上昇するため、間隔をあけ、2回検査をして、その間で抗体の上昇があれば確定することが出来ます。マイコプラズマ感染症は基本的に自然治癒しますが、肺炎の場合はマクロライド系抗菌薬を用いて治療します。しかし2000年よりマクロライド耐性マイコプラズマが増加し、2011年では30~90%が耐性であったとの報告もあり問題となっています。耐性菌に対しミノサイクリン(MINO)やトスフロキサシン(TFLX)が抗菌力を有していますが、マイコプラズマ感染症に適応がなかったり、歯牙への色素沈着や関節障害などの副作用があったりするため、安易な使用は控える必要があります。自然治癒傾向があり、耐性菌感染でも重症化する例が少ない事から、マイコプラズマ肺炎の治療の基本はマクロライド系抗菌薬となります。解熱しない場合や重症例に対しては耐性菌の関与を考えMINOやTFLXに変更する事となりますが、投与期間は副作用等を考えできるだけ短期間とします。
(杉田久美子)