肺炎クラミジア感染性
クラミジア感染症の原因には3種類のクラミジアが知られていますが、今回はその中で肺炎クラミジア(Chlamidophila pneumoniae)と呼ばれる病原体についてお話します。肺炎クラミジアは通常は咽頭炎、気管支炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、中耳炎などを起こしますが、子どもの気管支炎や肺炎の起炎病原体の5~10%を占めています。また最近では気管支喘息、結膜炎、心筋炎、川崎病などと関連がある事も分かってきました。
肺炎クラミジアは飛沫感染で人から人に感染しますが、潜伏期間は3~4週間と長く、濃厚な接触がある集団(家族内・幼稚園・小学校など)でゆっくりと広がり、集団感染も報告されています。季節的には流行の傾向はありません。初発症状としては咳が最も多く、痰は無く、長く続く傾向にあります。他の疾患に比べると38℃以上の高熱を伴う事は多くありません。通常は軽症ですが、中には遷延化や重症化する事もあり、微熱や咳が続く場合には注意が必要です。また肺炎クラミジアに感染すると抗体が産生されますが、この抗体は感染防御機能を持たないため、繰り返し感染する事があります。血液検査では、肺炎例でも白血球数や炎症反応の増加は半数程度でしか見られず、一般的に炎症所見は強くありません。症状、血液検査やレントゲン検査に特徴的な所見は無く、これだけではマイコプラズマやウイルス感染と区別は出来ず、診断は血液中の抗体の上昇により行われます。しかし抗体が上がるまでに時間を要し、診断に時間がかかる事が少なくありません。また抗体検査にはまだ問題点もあり、マイコプラズマや他の細菌との重複感染も少なくないことから診断に困るケースもあります。
一般細菌感染症によく用いられるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果無く、治療にはマクロライド系、テトラサイクリン系の抗菌薬が用いられます。また短期間の不十分な治療では再燃することがあるため、10日から2週間と長めの投与が必要となります。抗菌薬は軽症例では内服で、入院例では点滴静注を行います。
咳が続く場合には肺炎クラミジア感染かもしれません。発熱が無いから大丈夫と判断せず一度小児科医にご相談される事をお勧めします。
(杉田久美子)