結核とBCG
BCGは生後5か月から受けましょう!
いまだにあなどれない大阪の結核
結核は結核菌が感染しておこる伝染病ですが、大阪は2011年、2,484人もの新たな結核患者さんの発生があり、悲しいかな結核事情が悪い都道府県です。大人の結核患者さんが多いと、大人から感染を受ける子供の結核も心配です。とりわけ、子供の結核は大人と違って、髄膜炎(注1)や粟粒結核(注1)など重症化しやすく、ときには命を失うこともあります。そして、この悲惨な小児結核の患者さんは以前から大阪に多く、子供の結核事情もまた大人同様悪いのです。
BCGの効果は、最近行われた再評価で「髄膜炎や粟粒結核などの重症な結核は約70~80%、肺結核を含めると約50%予防できる」と言われ、結核の発病を防ぎ、髄膜炎や粟粒結核などの重症化を防止します。また、BCGは、世界で最も実績のあるワクチンで、現在も世界172か国、アジアで92%の乳幼児が接種を受けています。さらに、我が国のBCGは毒力が弱く、副作用の極めて少ないワクチンであると評価されています。
BCGの効果が特に期待される重症の結核は、多くが0歳、1歳に集中しているため、乳児期早期(生後5か月から)にBCG接種することが重要です。
生後5か月になったらBCGを接種しましょう。
BCG定期接種の期間は、2005年以前は「4歳に達するまで」でしたが、2005年4月から「6か月に達するまで」に短縮されました。しかし、接種の安全性を配慮すると実際の接種時期は、早くても「生後3か月から」とする必要があり、そうなると接種できる期間は僅か3か月間しかありません。「定期接種の期間が生後6か月に達するまで」というのは、あまりにも短すぎるとして、小児科学会をはじめ多くの関係学会・団体から「最低12か月までの期間延長」の強い要望が出されましたが、厚生労働省はこの規定を変えませんでした。
ところが、2005年以降、BCG接種後の副反応として起こる骨炎や骨髄炎の報告(注2)が増えたこともあり、そこで国は、2013年4月からは「1歳になるまで」に定期接種の期間を延長し、「標準的な接種期間を生後5か月から8か月になるまでとする」という通知を出しました。今は「生後5か月になったら」BCGを接種するようにしてください。
(注1)髄膜炎、粟粒結核:肺の結核から、結核菌が血液に入り大量の菌が全身に拡がると髄膜炎(脳膜の結核)や粟粒結核(全身性の結核)がおこります。
(注2)結核菌でなくBCG菌にかかって起こる骨炎や骨髄炎。
(特別寄稿 高松 勇)