感染性胃腸炎の最近の動向

 

cc198 下痢、吐き気、腹痛、発熱などを主症状とし、病変の主な部位が胃腸であるとき、これを急性胃腸炎と呼びます。原因としては感染性微生物によるものとそれ以外に分けられます。頻度は感染性胃腸炎が圧倒的に多く、それ以外としては薬物、毒物など比較的まれなものです。

 感染性胃腸炎の原因の多くはウイルスによるものです。一部は細菌であり、またごく一部が真菌(カビ)、原虫、寄生虫などによるものです。

 ウイルスのうち、最近よく知られているのはノロウイルスです。これは別項目として扱われますのでそちらを参照して下さい。次によく知られているのはロタウイルスです。これは症状がノロウイルスよりも重いことが多いので、乳幼児にとってはいちばん注意すべきウイルスです。高熱、頻回の下痢、嘔吐などで速やかに脱水症状を起こします。けいれん、意識障害などの脳症状や強い脱水のために腎障害を起したりすることもあります。こうなると後遺症の心配をしなければならず、乳幼児にとっては大敵のウイルスです。以前は冬に流行りましたが、最近は春に多くなってきています。“白い下痢”ということで随分有名になりましたが、ウイルス性下痢は白っぽくなることが多く、ロタに特有のもではありません。まして“白くないからロタじゃない”というのは明らかに間違いです。血便が出てびっくりすることもあります。伝染力がかなり強いので小さな子どもだけでなく、ご両親も要注意です。症状がある程度治まって食欲が回復したら保育所、幼稚園出席は可能ですが、かかりつけ医との相談が必要です。ただし、二週間くらいはまだ便にウイルスが出ているので、オムツの取り扱いは要注意です。厄介なウイルスですが、幸いワクチンが開発されました。高価ですが、お勧めのワクチンです。6か月以内の乳児が対象です。かかりつけ医に相談してみてください。

 細菌性腸炎は食中毒とほぼ同じですが、別項目として取り上げられます。

(今石秀則)

 

 感染症, 消化器   投稿日:2013/05/01