ノロウイルス

 

 感染性胃腸炎を起こす病原体には細菌、ウイルス、寄生虫など多種多様なものがあります。その中からノロウイルスを取り上げてみましょう。

 このウイルスは昭和43年(1968年)米国のオハイオ州ノーウォークという町で発生した急性胃腸炎の患者のふん便から検出され、ノーウォークウイルスと呼ばれました。その後、このウイルスがウイルスの中でも小さく球形をしていたことから小型球形ウイルスと呼ばれ、後にこのウイルスには2種類あり、正式にノロウイルスと、今ひとつはサポウイルスと呼ばれるようになりました。

 ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、汚染された貝類(カキ、大アサリ、シジミ、ハマグリ等)を生あるいは十分加熱しないで食べた場合、食品取扱者を介して汚染した食品を食べた場合、患者のふん便や吐物から二次感染した場合などがあります。

 ノロウイルス感染症は一年を通して発生はみられますが、秋から発生件数が増えはじめ、1~2月が発生のピークになる傾向があります。

 ノロウイルスの感染から発症までの時間は24~48時間で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これらの症状が1~2日続いた後で治癒し、後遺症はありません。現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありませんので、体力の弱い乳幼児、高齢者は水分と栄養の補給を十分に行い、体力が消耗しないようにしましょう。

 ノロウイルスによる病気かの判断は臨床診断では特定できませんので、ウイルス学的検索によって診断されます。便のウイルスを短時間で検出できるキットがあります。

 このウイルスは、下痢等の症状がなくなっても、1週間程度、長い時には1か月位ウイルスの排泄が続くことがありますので注意しましょう。

 ノロウイルスの感染力を失わせるには、アルコールや逆性石鹸ではあまり効果がありません。完全に効果を上げるには次亜塩素酸ナトリウム(商品名ハイターなど)が有効です。家庭で容易に行えるのは、まな板、包丁、食器、ふきん、タオル等の熱湯消毒(85℃以上)で、1分間以上加熱するのが有効です。

 ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、口に入って感染することがありますので、吐物や下痢便は速やかに適切に処理すると共に手洗いを十分にすることが大切です。

 感染が疑われた場合には保健所やかかりつけ医にご相談ください。

(奥村勝彦)

 

 感染症, 消化器   投稿日:2013/05/01