日本脳炎
脳炎、というからには恐い病気であることは何となくわかると思います。発熱、頭痛、嘔吐などの症状から始まり、意識の曇り、異常な興奮状態、けいれん発作などがおこり始めます。原因は日本脳炎ウイルスです。このウイルスはブタなどの身体のなかで増殖します。風邪のように人から人には感染しませんが、そのブタを刺したコガタアカイエカという蚊に刺されることで人にウイルスが感染します。日本脳炎ウイルスに有効な治療薬はありません。生命や脳を守るような治療を試みますが、約20%の患者さんが死亡し、仮に助かっても、約50%の患者さんは精神神経に後遺症を残す、即ち障害をもつことになります。
そうすると、かからないように予防することが一番大切ですね。日本では住環境が整備され、蚊に刺されにくくなりました。また予防接種も普及しました。これらを含め様々な要因により、日本では1960年代、年間千人以上の患者さんがみられたのに対し、1990年以降、毎年10人以下にまで激減しております。でも、もう日本脳炎ワクチンは不要と考えられているわけではありません。現在、日本でも西日本を中心にブタを調べると日本脳炎ウイルスが確認されています。即ち、日本脳炎ウイルスをもった蚊が飛んでいて、刺される可能性は十分ありますので、今は新たな患者は少ないですが、やはり、ワクチンを接種して予防した方がよさそうです。ところが、日本脳炎ワクチンを接種しない方がいいのでは、という話を聞いたことがあり、どうしたらいいかわかりにくく迷っている方がおられるかも知れません。どんなワクチンでも、どうしても一定の割合で副反応は起こります。平成17年に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)という神経系の副反応が問題になり、厚労省は一時「積極的勧奨の差し控え」との立場をとっていました。
その後、新たなワクチンが開発され、平成22年度から日本脳炎の予防接種を通常通り受けられるようになっております。平成17年度から21年度の間に接種対象年齢であった子ども達は、予防接種を受ける機会を逃している可能性があります。詳細は厚生労働省のホームページにも案内されています。各自、母子手帳の記録を確認の上、かかりつけ医に相談し是非、必要回数を接種して下さい。
(田邉卓也)