首のぐりぐり
頚部にぐりぐり(しこり)があることを心配して来院される患者さんは結構多いものですが、そのほとんどがリンパ節です。
リンパ節は体の中に侵入してきた病原菌をやっつける防衛陣地のような働きをしますので、頭や顔の皮膚、のど、虫歯などから菌が入ってきますと首のリンパ節が炎症をおこして腫れることがあります。このときは外からはっきりとわかるぐらい大きくなりますし、たいていは痛みも伴います。しばらくして感染が治ってしまうと少し小さくなりますが、その後何か月もしっかり触れる場合があります。
赤ちゃんで首や頭の後ろにぐりぐりがあるといって心配されるケースや小学生ぐらいのお子さんでいつからかわからないけれど、ある日首のぐりぐりに気づいたなどの例の多くは炎症がおさまった後のリンパ節で心配いりません。たいていは頭の湿疹が原因であったり、前にかかった風邪の時に腫れたリンパ節です。急に大きくなって痛みを伴うようなものは抗菌剤の内服や程度によっては切って膿を出すような処置が必要です。
リンパ節の腫れる原因には悪性リンパ腫などの悪性の病気もあります。この場合は痛みはあまりありません。短期間にどんどん大きくなってくる場合や数の増えてくる場合は痛みがなくても診察を受けて下さい。この他まだ原因はよくわかっていませんが、2~3か月の長期にわたってリンパ節が腫れる亜急性壊死性リンパ節炎という病気もあります。(風疹などのウイルス感染、川崎病、リウマチ系の病気などでもリンパ節は腫れますが、多くの場合発熱や発疹などリンパ節の腫れ以外の症状が前面にでますのでここでは触れないでおきます)
リンパ節以外で首のぐりぐりの原因となるものに、生まれつきの病気で先天性頚のう胞というものがあります。のう胞というのは袋のことです。これには甲状腺の発生に伴って首の真ん中あたりにできる正中頚のう胞と、首のやや側方にできる側頚のう胞と呼ばれるものがあります。感染を起こすと急に腫れ上がって痛み、この時初めて気づかれることも多いようです。これらは手術して取ってしまう方が良いでしょう。この他、甲状腺にできる腫瘍も治療が必要です。いずれにしても首のぐりぐりに気づいたら一度はかかりつけの先生に相談してみてください。
(山崎 剛)