急性中耳炎
急性中耳炎は生後6か月から3歳くらいまでの乳幼児によくみられる病気です。
かぜなどがきっかけになって、鼻やのどにいる細菌が耳管(鼻の奥と耳の奥をつなぐ管)を通って中耳腔(鼓膜の奥にある小さな部屋)に入り込み、炎症をおこします。その結果、中耳腔に分泌液や膿がたまり、鼓膜は充血して腫れます。これが急性中耳炎です。
乳幼児はかぜをひきやすく、また耳管が短くて細菌が中耳腔に入りやすいために、中耳炎をよくおこし、何度も繰り返すこともあります。年長になって免疫力がつき、かぜをひかなくなると、自然に中耳炎も減ります。お風呂やプールで耳に水が入ったり、耳そうじをしたために中耳炎になることはありません。
急性中耳炎というと、皆さんは「耳を痛がるもの、耳だれが出るもの」と思っているかもしれませんが、少し違います。初期には鼻水、せき、発熱などかぜの症状がみられるだけで、痛みや耳だれはなく、医師が耳鏡やファイバースコープを使って耳の中をのぞき、鼓膜の変化をみて初めて中耳炎と診断できるのです。中耳炎の多くはこのような形で見つかります。病状が進むと、痛みや耳だれがみられるようになります。耳だれは、中耳腔にたまった膿が鼓膜を破って外に流れ出したものです。
治療はふつう抗生物質の飲み薬を7日から10日くらい使います。多くの場合、これで鼓膜の充血や腫れはおさまり、中耳腔の分泌液も数週間後には消えます。軽症の場合は自然に治ることも多いので、抗生物質を使わずに経過をみます。
抗生物質による治療でよくならず鼓膜切開が必要なケースや、最初から鼓膜がひどく腫れたり、耳だれが多いケースは、耳鼻科医へバトンタッチします。中には何度も繰り返したり、滲出性中耳炎へ移行するケースもありますが、年長になると減っていく病気なので、過剰な心配はいりません。
小児科医は「子どものかぜの専門家」です。そして「かぜに中耳炎はつきもの」です。お子さんがかぜをひいたときは、耳の中を見て中耳炎があるかどうかチェックしてもらうことが大切です。
(絹巻 宏)