細気管支炎

 

cc235 細気管支炎は、冬から早春にかけて流行する2歳未満の乳幼児、特に6か月前後の小さな赤ちゃんに多くみられる病気です。冬の呼吸器疾患による乳児入院の最大の原因となっています。症状としては、鼻水、くしゃみ、せきなどのかぜ症状からはじまります。

 熱はそれほど高く出ないですが、呼吸状態に特徴があり、かぜ症状後しだいに呼吸が浅く速くなり、さらに小鼻をひくひくさせ、胸がペコペコとへっこむ(陥没呼吸)など呼吸困難が強くなります。酸素を受け取る末梢気道(細気管支領域)の病気ですので、末梢気道が閉塞しゼーゼー(喘鳴)を伴ったり、病状が進むと体の中の酸素が不足して、皮膚の色が悪くなったりします(チアノーゼの出現)。原因の大部分はRS、ヒト・メタニューモ、パラインフルエンザ、アデノなどのウイルス感染で、RSウイルスがその大半を占めています。治療はウイルスが原因ですので、これといった特効薬はなく対症療法が中心です。抗生剤は細菌の混合感染時のみ効果があります。大切なのは水分の補給で、脱水になるとますます痰がねばっこくなり、気道閉塞、酸素の換気障害をひきおこし、呼吸状態が急速に悪くなり、酸素不足におちいります。少量ずつでも回数を多くして水分補給をこころがけて下さい。細気管支炎は喘息と症状が似ていますが、病変が末梢気道にあるので平滑筋の発達が悪く気管支を広げるお薬も喘息ほど効果がありません。このように特に薬はありませんが、ウイルス感染症ですので、水分補給、酸素投与などの対症療法を迅速に適切に対応すれば、数日間で軽快し、概して予後は良好な疾患といわれています。RSウイルス感染のハイリスク児である早産児、慢性肺疾患児、先天性心疾患児には予防法として、ヒト型に変換された抗RSウイルス単クローン抗体(パリビズマ:商品名シナジス)の投与があります。しかし、その対応が遅れれば症状が急速に進行し、短期間に呼吸不全に陥り重篤化しますので、特に1歳未満の赤ちゃんでは、熱が高くなくても多呼吸、ミルクの飲みが悪くなり、陥没呼吸があれば、速やかに医療機関を受診して下さい。細気管支炎は特に6か月未満の赤ちゃんでは要注意で、乳児の呼吸器疾患では入院の最大原因であることをもう一度強調しておきます。

(田中祥介)

 

 呼吸器・循環器   投稿日:2006/09/01