歯並び
歯並びが悪くて、噛(か)み合せが正しくない状態を改善し、正常な噛み合せにする治療を歯科矯正(しかきょうせい)治療といいます。この治療の目的は、(1)食べ物を十分によく噛めるようにする、(2)歯磨きをきっちりとできるようにして、むし歯や歯周炎にかからないようにする、(3)歯並びの悪さを気にしないで健康的な笑いができるようにする、(4)さらに最近増えている顎(がく)関節症を予防することができる、などです。
歯並びが悪くなる原因は、先天的と後天的なものとがあります。先天的なものは、唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)の奇形、顎(あご)の発育不全や過成長、歯の欠如、顎の中に埋まったままの状態の歯などです。一方、その原因の大部分は後天的なもので、次のような場合があります。(1)乳歯のむし歯治療をきっちりとしないでほっておいたために、歯の根だけになったり、歯が抜けたままにしておいた場合、(2)乳歯と永久歯の生え変わる時期に、いつまでも乳歯が残っている場合、(3)生活リズムの不規則・運動不足・食生活上の問題や偏食などを原因とする顎の発育不良がある場合、(4)頬づえをついたり、遅くまで指しゃぶりをするくせのある場合などです。
歯並びが悪くならないように防ぐことはできます。それには食生活も含めて子どもたちがまともな生活ができる環境が大事です。体を動かしてしっかりと遊び、三度の食事をちゃんと食べ、おやつは時間をきめ、軟らかくて甘いものにかたよらず、しっかりとよく噛んで食べるようにすることです。そして寝る前にていねいに歯をみがくむし歯の予防や、早期発見・早期治療が大切です。子どもの歯科治療を継続的に、そして系統的にするためには、小児歯科専門医をかかりつけ医として決めておくことをお勧めします。そこではむし歯治療だけではなく、歯ブラシ指導、むし歯や歯肉炎の予防処置、さらには悪い歯並び予防の咬合(こうごう)誘導治療もおこなっています。
歯科矯正治療は一般的に永久歯が萌えそろう小学校高学年ころから始め、顎の発育に合わせて、治療を進めていきます。その後成人では、この治療はいつでもできます。この治療は口蓋裂の場合を除いて保険が利きません。治療開始まえに、専門医とよく相談してください。この治療の成功の鍵は、子ども自身が治したいというしっかりした気持ちを持つことです。
(特別寄稿 山上紘志)