急性虫垂炎
腹痛は小児ではもっともよくみられる訴えの一つです。大半は消化不良や便秘によるもので心配ありませんが、まれに手術を含む積極的な治療をしないと短時間のうちにとても悪くなってしまう病気(このような病気を急性腹症といいます)があります。急性虫垂炎は小児の急性腹症の代表と言える疾患です。
“虫垂”というのは、盲腸(右下腹部にある大腸の始まりにあたる部分)にしっぽのようにくっついている、長さ5~10cm、太さ4~5mmのひも状の臓器です。この虫垂が膿んで赤く腫れるのが急性虫垂炎です。細い内腔が何かの原因でつまることがきっかけとされています。放っておくと一日ニ日で虫垂の壁が破れ(穿孔)、周囲に膿の塊ができたり、膿がおなかの中に広がってしまいます(腹膜炎)。虫垂炎のことをよく“モーチョー”といいまが、これは昔は手術の時すでに虫垂が破れていて、近接する盲腸まで炎症が波及して腫れていることが多かったためです。こうなったら大変ですので、破れないうちに手術して摘出しなければなりません。
この病気は小学生や中学生によくおこります。腹痛、吐き気、発熱などの症状がみられますが、主症状は腹痛です。最初はみぞおちの辺りに痛みを感じ、数時間から半日後には虫垂のある右下腹に痛みが移ってきます。痛みは持続性で、排便で軽くなるということはありません。歩いたり飛びはねたりするとお腹にひびくので、腰をかがめてそろそろ歩くようになります。高熱や下痢はすでに破れてしまった場合によくみられる症状です。医師は、右下腹を押えて痛みがあるか、その辺りの腹筋が緊張して硬い感じになっていないかなどを診ます。また血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを行います。腸炎や、女の子では卵巣や子宮の病気と鑑別が必要です。年齢、症状、所見が典型的でない場合は診断がむつかしいことがあります。診断がついたら手術をして腫れた虫垂を切除します。穿孔していなければ1週間ぐらいで退院できます。
(山崎 剛)