子どもの過敏性腸症候群
朝トイレにこもりっきりになる子どもたち
「またトイレにいくの?」「いつまでトイレに入っているの!早くでなさい!」
登校前の慌ただしい時間帯、何度もトイレに行く、排便しても何となくすっきりしないなどの訴えの子どもたちがいます。これは過敏性腸症候群という病気かもしれません。下痢や便秘などお通じの異常、腹痛や腹部の不快感などが主な症状で、炎症や出血のない機能性の胃腸の病気の一つとされています。細菌やウイルス感染による急性腸炎、クローン病や潰瘍性大腸炎という慢性の腸の病気などとの鑑別を要します。もともと幼少時に腹痛を訴えやすい子どもに起こりやすいとされますが、血液や尿・便の検査や腹部レントゲンや超音波などでも特に異常は見られません。しかし、症状は持続することが多く、子どもにとって朝や外出中は本当に苦痛の多い時間や環境になります。
過敏性腸症候群の中には、起床時に腹痛が多いが午後はおさまる低年齢の子に多いタイプ(腹痛型)、下剤を使わなければ全く便意がないか、便意はあるがお通じがない女の子に多いタイプ(便秘型)、起床時に下痢や腹部不快感が強くなる思春期の男の子に多いタイプ(下痢型)、お腹の張りやお腹が鳴り、おならが多いなどの症状があり、静かで狭い教室の中では特に気になる思春期の女の子に多いタイプ(ガス型)などに分けられます。
治療には規則正しい生活や排泄習慣、腹部の保温などが必要になりますが、タイプにより食事での注意点が異なります。腹痛型や下痢型では冷たい飲物やカフェイン、高脂肪食を控え、便秘型では水分摂取や繊維の多い食品を摂取します。ガス型ではたまねぎや芋類などのガス貯留しやすい野菜や果物、炭酸飲料などを控えます。トイレにこもることで家族からも注意され、遅刻や欠席も多くなり不登校になったり、罪悪感や自尊心の低下からうつ病を合併したりする場合もあります。このような症状をもつ子どもたちや保護者の方は、早めに小児科専門医、特に子どもの心身症を専門とする小児科医に相談されることをお勧めします。
(竹中義人)