睾丸の痛み、腫れ

　睾丸が急に痛くなってきた・・どうしたら良いのでしょうか。

　原因として下記のようなものがあげられます。

　もっとも注意が必要なのは睾丸捻転です。短時間のうちに睾丸が壊死してしまう緊急性のとても高い病気ですが、そういう病気のあること自体知らない方が多いようです。

　睾丸は精索というひもにぶらさがっています。この中には睾丸につながる動脈や静脈が通っています。睾丸は普通は陰嚢に付着していて、ある程度固定されています。しかし、固定がゆるいと何かの拍子に陰嚢内で睾丸が回転し、それとともに精索がよじれてしまうことがあります。これが睾丸捻転です。精索がよじれると睾丸の血流が障害され、睾丸のうっ血、虚血がおこります。そのまま放置すると短時間で睾丸組織が死んでしまいます。手術してねじれをとれば治りますが、壊死に陥る前にねじれを解除しないといけません。そのタイムリミットは症例ごとに差がありますが、発症から6時間とも8時間ともいわれています。学童期に好発し、活発に動いている日中よりも寝ているときや、朝方に発症することが多いようです。多くの場合、突然の激しい陰嚢部、あるいは下腹部の痛みで始まり、次第に陰嚢が腫脹してきます。悪心や嘔吐を伴うこともあります。一刻も早く診断して手術しなければいけません。男の子が腹痛を訴えた時には、必ず陰嚢、睾丸の痛みでないか聞く必要がありますし、またパンツをめくって陰嚢をしっかり観察する必要があります。実際にはゆっくり発症してくることがあったり、痛み、腫れがあまり強くないこともありますから注意が必要です。とにかく睾丸の痛みを疑ったらすぐに医療機関を受診しましょう。

　睾丸捻転とまぎらわしい病気に睾丸上体炎や睾丸垂捻転、睾丸炎があります。症状、所見がとても似ているケースもあり、エコー検査や血液検査なども参考にしながら診断しますが、鑑別に難渋することがあります。

　睾丸上体炎は細菌の感染によるものです。睾丸の背面にひも状に付着しているのが睾丸上体で、睾丸で作った精子の通り道にあたります。これにおちんちんから侵入した細菌が感染すると腫れて痛みます。痛みは通常徐々に始まります。睾丸自体は触ってもあまり痛くなく、またあまり腫れもしません。よく熱を伴います。抗生物質による治療が有効です。睾丸垂は睾丸に先天的に付着している数㎜の小さい胎生期の遺残物ですが、これがねじれて痛むことがあります。睾丸垂捻転です。睾丸の一部が腫れているような感じがあり、症状は一般に睾丸捻転と比べて穏やかです。多くの場合手術は不要で自然に症状はとれていきます。

　睾丸炎の多くはおたふくかぜに合併します。ウイルス性で自然に治癒するので、腫れた睾丸を冷やしたり、鎮痛剤を服用したりといった対症的治療で経過をみます。

　以上お話ししましたように睾丸が痛む、腫れる病気には緊急を要するものがあります。様子をみないでできるだけ早く小児科か泌尿器科を受診してください。

（山崎　剛）