子どもの低血圧
人が急に立ち上がったりすると立ちくらみを起こすことがあります。また学校の朝礼や電車の中で起立中に冷や汗がでて気分不良となりしゃがみこんだり、ひどい場合には意識がなくなる場合もあります。これは血圧が低下し脳の血液循環が低下するためです。欧米ではこれを起立不耐症とよんでいます。日本では起立性調節障害(OD)に当たります。ODには主に起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群と血管迷走神経性発作があります。子どもの低血圧の中には、自覚症状があまりなく治療不必要な本態性低血圧もあります。子どもの血圧は成人より低く、子どもの低血圧のはっきりした基準はありませんが、本態性低血圧は症状のない限り心配はいりません。一方、日常生活で問題となる起立直後性低血圧では起立直後に最高血圧が40~50mmHgまで低下し、起立30秒後でも血圧が元に回復しません。起立時に強い立ちくらみを感じる人はこのタイプです。
血管迷走神経性発作を起こす子どもは普段は無症状ですが、起立中に突然、脳貧血や意識消失を起こすことがあります。ODの発症には体質的なものだけでなく、心理社会的背景が深く関係しています。内向的で引っ込み思案な子どもが多い傾向にあります。幼少時から周囲の人に気をよく使う『おりこうさんタイプ』で、家族に本音が言えずに内面では孤立し、この苦しみが両親に気付いてもらえないこともあります。ODの治療は身体面だけでなく心理社会面からも行います。まず昇圧剤を使って身体面の治療を行います。また日内リズムが崩れているので早寝早起きなどの規則正しい生活習慣を身につけます。さらに環境調整や心の治療も大切です。保護者は子どもの訴えをゆっくり聞き、学校でのいじめや友人とのトラブルがないか、学校は子どもの病気を理解しているかなど、子どもの心理的ストレスを軽減するように環境調整を行いましょう。詳しくは http://inphs-od.com を御覧ください。低血圧やODについて説明されています。また、日本小児心身医学会からODガイドラインも出版されています。
(田中英高)